今回の講座では『ホイール設計くん』の特徴でもある,展開図・側面図の表示機能について解説します。
ハブ3面図
ハブ3面図表示機能はその名の通り,リム・ハブがどのような位置関係かをざっくりとイメージするためのものです。
上の例からも分かるように,リムが左側に3mmオフセットしているとか,左フランジと右フランジの位置関係とかがビジュアル的に分かるので,「ちょっとこれは無理があるかな」とか「これは組みやすいそうだな」とかを検討する際に活用ください。
ホイール展開図
ホイール展開図機能は,ハブとリムを一直線に切り開いて展開したときに,ハブの何番目の穴がリムの何番目の穴に接続されるかを分かりやすいく表示したものです。
特に役に立つのが,『リムのバルブホールのすぐ隣のスポークが,ハブの何番目の穴に接続されるか』です。これを間違えると,バルブまたぎのホイールになってしまって大失敗です。バルブの横から仮組していけば絶対に間違えないので,この絵とにらめっこして仮組してみてください。組み方が一目でわかるので簡単ですよ。
まずホイール展開図ですが以下のような考えで平面図にしています。
特に後輪ではドライブ側(DS = Drive Side, フリー側)と反ドライブ側(NDS = Non Drive Side, 反フリー側)は非対称ですので以下のようにドライブ側のフランジがリムに近い状態になります。このままも式化すると3次元的な絵になってしまって分かりにくいので,リムを一か所だけ切断して真横に伸ばした絵が展開図になります。
『ホイール設計くん』では次のように展開図が模式表示されます。ハブフランジが外側,リムが内側に描かれていることにご注意ください。
それと同時にもう一つこの絵には重要な情報が表示されています。
それはハブに対するスポークの『右落とし』『左落とし』情報です。
説明のために具体的な例を挙げてみましょう。
一般的にイタリアン組する場合は『左落とし』で組めと言われます。これは多くの場合は正しいですが,一部例外があります。それがヨンロク組の場合。
この図は32H,ヨンロク組の場合です。
青丸で囲っている部分をよく見てもらうと,スポークの頭が■で描画されているのが分かると思います。ちゃんとハブフランジの内側(ヘッドイン)・外側(ヘッドアウト)を考慮して描画しているので,スポークヘッドがどこに出るか分かります。
『右落とし』『左落とし』はフリーハブを上に向けて持ったときに,スポークをどう落とすかのことを指すのですが,右半分の図に書いた通り,32H, ヨンロク組の場合は『右落とし』が正解です。
でも,この絵があれば頭を使って考えなくても,絵を眺めているだけで正しく組めてしまいます。絵の通りに組んだら自然と『右落とし』になるような展開図を表示しているからです。
では,32H, ヨンヨン組ならどうでしょうか?
下図の通り正しく,ヨンヨン組なら『左落とし』になるようにスポーク頭が描画されていますね。
仮組がうまくいかないとか,ちゃんと組んだのにスポーク長さが足りないとか言っている人の大半はこのあたりで勘違いしているケースが多いです。そこで,ビジュアル的にミスを防止できる機能として展開図にスポーク頭を描画するようにしました。簡単でしょ?
ここまでで『右落とし』『左落とし』も間違えずにスポークをハブに通すことができました。
それに,リムのバルブホールすぐ隣のスポークがハブの何番目の穴に接続されるかも把握できました。
ここまでくれば,仮組でのミスはほぼ防げると思っています。
私も初心者の頃は散々ミスして痛い目に遭いましたが,自分で作ったこのツールを使ってミスなく仮組できるようになりました。スキルはアップしていないですが,道具(ツール)を作ったことでミスしなくなったという感じですね。
側面図(ドライブ側,反ドライブ側)
最後になりますが,ホイールの側面図についての解説です。
上記の展開図でほぼ仮組できているのになぜ側面図が要るの?と言われそうです。まさにその通りなのですが,側面図を使うと確認しやすいポイントが1個ありますので紹介します。
それはハブから出たスポークの【角度】を確認しやすいという点です。
ハブから出たスポークが隣のスポークの頭に乗っかると組めません。本「ホイールの設計講座」の初期の方で組み方の制約について述べましたが,そこに立ち返ってみましょう。
わざとNGの事例として20Hの6本組,20Hの8本組の側面図を表示してみます。
どちらも見るからにダメですね。スポークが隣のスポークの頭を乗り越えてしまっています。8本組になるとさらにひどい。
では,うまくいくケースならどう見えるか。
32Hのヨンロク組を描画してみます。全然無理が無く組めそうですね。
このように側面図を見ていると「明らかにこれは無理だな」とか「これは簡単に組めそうだな」というのがイメージしやすいと言うメリットがあります。側面図のハブの部分を見ていただくと,赤丸・緑丸があるのが分かると思いますが,これはスポーク頭です。
展開図の方にもスポーク頭を描いていますので,基本的には間違えることは無いと思いますが,再確認の意味も込めて側面図でも正しく仮組できているかご確認いただけます。
以上でホイールの設計講座シリーズを終わります。
いいホイール組んで思いっきり走り込みましょう!
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