ホイールの設計講座 (3) リムの選定

リム

ここまでの講座でスポーク本数,組み方の二つが決まりました。
今回の講座ではリムを選定します。

ホイールにおいて一番重要な部品が何かと問われれば,迷わず「タイヤ!」と答えが返ってくるでしょう。
タイヤは路面の凹凸による衝撃を吸収し,路面とグリップして駆動力を伝えてくれる唯一無二のコンタクトポイントなので最重要なのは当たり前。
F1なんかでもタイヤ・タイヤ・タイヤ,機材の話の半分はタイヤの話です。特に耐久レースなんかでは顕著ですよね。自転車でも同様です。

では,2番目に重要なパーツは何かというと,リムです。
リムは車輪の剛性の大半を占めるパーツであり,ホイールの外周部にあるので慣性モーメントが大きく走りに影響します。
端的に言えば,「軽いリムは明らかに漕ぎ出しが軽い」と言っていいでしょう。
慣性モーメントは,質量に比例し,半径の2乗に比例します。
つまり,ホイールの最外周部のタイヤおよびリムの2つのパーツは最も慣性モーメントに効きます

では,良いリムとはどのようなものなのでしょうか?
良いリムは軽くて剛性が高く,真円を維持できるもの。

ここでいう軽さと剛性の高さは一般的には相反するものです。
単純に考えれば材料を多く使用した肉厚のリムは剛性が高いですが重くなりがち。

しかし,最近のリムは進化しています。
たとえば,アルミリムなんかでも合金の金属添加物の種類を工夫して素材にこだわっています。こうした硬度・強度が高い材質を使用した薄肉のワイドリムは,軽さと高剛性を両立しています。
重量で言えば400g~450gあたりで軽くて剛性の高い高品質なリムが簡単に手に入ります。

参考:HEDのBelgium Rは425gのバランスの良いワイドリムです。


ロードバイクなど舗装路での軽い加速感や走行性能を追求するのであれば,薄肉のワイドリムを選択肢に入れることをオススメします。もちろん,薄肉のワイドリムは万能ではありません。応力が集中するニップル保持部やブレーキサーフェス部は肉厚ですが,それ以外のリム側面は極端に薄く作られています。
そのため,リム側面を何かにぶつけたりすると悲惨で簡単に凹みます。

つまり,
薄肉ワイドリムは
軽さ 〇
剛性 〇
強度 ×
ということですね。

サイクリング車のようにオフロードを走って小石が跳ねたり,枝が当たるようなシチュエーションだと簡単にリムが凹んで傷んでしまいます。
リム側面の痛みは直せませんので,オフロードを走るなら薄肉ワイドリムは絶対に避けるようにしましょう。

では,パラメーターを強度重視に振ったらどうなるか?
全体的に同じ肉厚のナローリムが第一候補に挙がってきます。
なんせ全体が肉厚に作られていますから,強度的には一番優れています。

参考:VelocityのDeep Vは580gの重量級リムですが抜群の厚みを誇ります。


その分だけ軽さは犠牲になってしまっており,リム重量は500g前後になると思います。この重さが強度の証。安心感が違います。
厚肉ナローリムは
軽さ ×
剛性 〇
強度 〇
となります。

オフロード用途なら厚肉ナローリム一択です。
多少重量が重くとも壊れないのが一番安心なので,多少の漕ぎ出しの重さは我慢しましょう。
その分,日々不安を感じずにサイクリングや旅を満喫できることでしょう。

まとめ

薄肉ワイドリム厚肉ナローリム
重量〇(400-450g)×(500g<)
剛性
強度×
向いている用途ロードバイクサイクリング車,ツーリング車

というわけで,今回の講座でリムを選ぶことができました。
次回の講座ではホイール唯一の回転駆動部であるハブを選定しましょう。

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