前回の講座では,リムのERDを求めました。
今回の講座では,リムの情報とハブの情報,そして組み方情報から,スポーク長さを求める方法について,『ホイール設計くん』を用いて解説していきます。
リム情報
まず,リムの情報として入力が必要なパラメーターについておさらいします。
・リムのERD:有効リム直径
・リムのオフセットセンター量:(オフセットリム/非対称リム用)リム中心からニップル穴がどれだけ左側にオフセットしているか。(※一般的な後輪を想定しているので左側にオフセットするした値を正の値としています。ディスクブレーキ用の前輪の場合等だと逆に右側にオフセットしたリムを使用する場合もあり得ますのでその際には負の値を入れてください。)
・リムの最大スポークテンション:各リムメーカーが指定している最大スポークテンションを入力してください。左右のスポークテンションを計算するのに使用します。
・スポーク伸び係数:これもおまけです。興味のある方はいじってみてください。
ERD
前回の講座でERDの求め方についてまとめましたので参考にしてください。
リムのオフセットセンター量
ERDともう一つ重要な情報があります。それがオフセットセンター量と呼ばれるもので,特に後輪を組む上で重要なパラメーターです。
最近のリムメーカーの技術向上により,前輪リムと後輪リムをあえて異なる形状に仕上げていることがよくあります。DT SwissのRR440 AsymmetricシリーズとかKinlinのXR-31(XR-31RT)シリーズ,VelocityのA23 OCなどが有名ですが,後輪のニップル穴がリムの中心から2.5-3mm程度左側(反ドライブ側,NDS側,反フリー側)にオフセットして穴があけられているのです。
注:チューブのバルブホールはリムの中心にあわせて開けられています。リム中心からオフセットしているのはニップル穴だけです。
商品名でいうと
・OC:Offset Centerの略称。中心からオフセットしているの意
・Asymmmetric:非対称の意。左右対称ではなく非対称に設計しているということ
などが付いており,購入する際には断面図をしっかり確認してください。以下のように各メーカーカタログを見ればオフセットの様子が分かると思います。
Velocity A23 OCの例:このリムは3.0mm左にオフセットしています。
DT Swiss RR440:このリムでは2.5mm左にオフセットしています。
ニップル穴が中心からオフセットしている場合は,オフセットセンター量が何mmなのかという情報がメーカーのカタログに書かれていますので,その値をメモしておいて,『ホイール設計くん』のリム情報の欄に入力してください。一般的には2.5~3.0mmオフセットが多いと思います。
前輪リムの場合は左右対称のことが多いですから,オフセットセンター量は0mmと入力すればOKです。簡単ですね。
最大スポークテンション
各メーカーの提供してくれているテクニカルデータを見てみると最大スポークテンションが必ず記載されています。(Max Spoke Tension等)
DT Swissの例だとロードバイク用のリムで最大1200N(122kgf)と指定されているので,ドライブ側(DS, フリー側)がこれ以上のテンションで張ることが無いように注意しないといけません。
『ホイール設計くん』では左右それぞれのスポークテンション比を自動的に計算するようにしていますので,最大スポークテンションを入力しておくと,ドライブ側・反ドライブ側それぞれのスポークテンションが出ます。
スポーク伸び係数
スポークはテンションがかかると弾性変形して伸びるため,伸び量を考慮してスポーク長を計算することで,スポークが長すぎてニップルの頭から飛び出すというトラブルを防ぐことができます。
2.0-1.8-2.0ダブルバテッドスポークで1000[N]あたり約1[mm]伸びるというのがメーカーからデータとして出ています。
初期値はダブルバテッドスポークの0.001[mm/N]としていますが,もしスポークメーカーが提供する応力-歪み曲線データから伸び係数が分かる場合は入力してください。細かいことを気にしない場合はデフォルト値で構いません。
それではリム情報を入力してみましょう。
以上でリム情報の入力は完了です!
今回の講座で『ホイール設計くん』にリム情報を入力できました。
次回の講座では『ホイール設計くん』にハブ情報を入力していきます。
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