ホイールの設計講座 (2) 組み方の決定

スポーク

前回の講座でホイールを組む目的と,スポーク本数が決定しました。
今回はスポークをどういう組み方をするかについて検討していきます。

前輪の組み方

今回もまた前輪の話から始めますが,前輪はとにかく軽量で空力が良ければオッケーです。
なので,結論としては
18H: ラジアル組(そもそも2本組,4本組,6本組は不可能)
20H: 2本組
で組んでおけば間違いないです。

クラシカル自転車にはどうするか?
その場合は,前輪32H, 36Hで6本組で行きましょう。スポーク交差の見た目が美しいのは6本組です!

さて,後輪の組み方の話に戻りましょう。

後輪の組み方

主な組み方には以下のようなものがあります。

ラジアル組

0 crossとも言います。ハブを中心に放射状にスポークが伸びており,スポーク同士が交差しない組み方です。(crossする点がゼロ)
デザインとしては最もクラシカルなホイールです。1880年代に自転車が誕生した頃,まだスポークを交差させて組むという方法が開発されておらず,ラジアル組のスポークがハブとリムに溶接されていました。その後,溶接をやめてニップルを用いたネジ切りスポークになり,スポークを交差させて組むのが主流となります。大阪府堺市のシマノ自転車博物館には150年前のラジアル組の自転車が今も展示されていますので,ぜひ参考にしてみてください。

自転車の歴史に脱線してしまいましたが,ラジアル組は現代でも前輪の代表的な組み方です。しかし,後輪では捻り方向の剛性が不足するためほとんど使われません。組み方としては最も簡単です。初心者の方が最初に試すなら迷わずラジアル組をオススメします。ホイール全周で対称なので,どう仮組みしてもミスすることはありません。
スポーク長も最短にできる組み方なので最軽量のホイールを組む場合には特にオススメします。前輪はやっぱりこれ。

2本組

1 crossとも言います。スポーク同士が1回だけ交差します。ラジアル組よりわずかに捻り方向の剛性が高く,縦方向の剛性が低いのが特徴です。あまり使われるケースは多くは無いですが,20Hの前輪を2本組にするとやや縦方向の剛性が落ちるため,衝撃が和らぐという説があります。といっても路面の凹凸の9割はタイヤとチューブの変形で吸収してしまいますので,ホイールの変形で吸収できる衝撃はごくわずか。ラジアル組の見た目が気に入らない場合は2本組にして前輪を組んでみてください。

4本組

2 crossとも言います。スポーク同士が2回交差します。後輪では代表的な組み方の一つです。特に後輪のドライブ側(DS, スプロケット側, 車体右側)で頻繁に用いられます。捻り方向の力の伝達に優れており,後輪の組み方で迷った場合は4本組をオススメします。

6本組

3 crossとも言います。スポーク同士が3回交差します。後輪では代表的な組み方の一つです。後輪では頻繁に用いられます。4本組の次にポピュラーな組み方だと思います。後輪で迷った場合は4本組か6本組のどちらかを選択しましょう。

8本組

4 crossとも言います。スポーク同士が4回交差します。1970年代ぐらいまで36Hや40Hのホイールの時代は8本組で組まれていました。現代では軽量化がより重視されるようになり8本組が使われるケースは少ないです。現代でもタンデム自転車や数十キロの荷物を運ぶ業務用自転車などではよく用いられますし,またランドナー等のクラシカルなホイールを組むのであれば8本組がオススメです。

これらの組み方にはスポークの本数によって組める・組めないが決まっています。制約事項についてまとめます。

制約事項

ラジアル組:基本的に制約なし。16Hから40Hまでどのスポーク数であってもラジアル組なら可能。

偶数本組(2本組~8本組まで):18H等の2で割った際に奇数になるスポーク数の場合は偶数本組ができない。18H(9×2)はラジアル組専用として使うこと。

またスポーク本数X本とN本組とには以下の関係があります。
N本組 ≦ X/4

つまり,各N本組には最低必要なスポーク本数が決まっているということです。
2本組:8H以上必要
4本組:16H以上必要
6本組:24H以上必要
8本組:32H以上必要

これは実際に仮組して見ればわかりますが,ハブから出たスポークの角度が寝すぎていて隣のスポークの上に乗り上げてしまうので,スポークがリムまでまっすぐ伸ばせないのです。スポークの頭の近傍に無理な曲げが生じてしまうため,スポーク本数が少ない場合は6本組や8本組は避けた方が良いでしょう。

まとめ

以上をまとめるとそれぞれの組み方と対応するスポーク数はこのようになります。

ラジアル組:16H, 18H, 20H, 24H, 28H, 32H, 36H, 40H
2本組:16H, 20H, 24H, 28H, 32H, 36H, 40H
4本組:16H, 20H, 24H, 28H, 32H, 36H, 40H
6本組:24H, 28H, 32H, 36H, 40H
8本組:32H, 36H, 40H

また,これらの組み方は後輪のドライブ側(DS, フリー側, 車体右側)と反ドライブ側(NDS, 反フリー側, 車体左側)でバラバラの組み方を組み合わせることもできます。

左右バラバラの組み方

たとえば,有名なヨンロク組というものがありますが,これはドライブ側(DS, フリー側)を4本組,反ドライブ側(NDS, 反フリー側)を6本組にするというものです。
後日,詳しく解説しますが,左右のスポークテンションの差を小さくする効果があり,手組ホイールを組む人間としては作業しやすいです。

まとめですが,前回の講座でスポーク本数が決まり,今回の講座でスポークの組み方が決まりました。
次回の講座ではリムを選定していきましょう。

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